成熟市場において他社に先駆けて新商品や新サービスを投入しヒットさせるためには柔軟な発想が求められる。また企業の戦略プランナーとしても常に頭が柔らかいことは必須条件だ。「人は歳をとると頭が固くなって新しい発想が出来なくなる」と言われるが本当にそうだろうか。私はこれは正確ではないと思う。より正確に言うなら「人はマンネリに陥って新しい知識経験を求めなくなっていくと次第に新しい発想が出来なくなる」のだと思う。
認知心理学で有名なダニエル・カーネマン教授によると、私たちは普段の生活において直観的に判断し行動しているという。私たちの脳は右脳で直観が働いている時には左脳は休んでいるそうだ。物事をすぐに直観で判断し処理してしまうと脳は結論が出たと思いそこで思考停止してしまう。脳もそのほうが楽だからだ。しかし、ここで「論理的に考えてみよう」と思うと左脳が起動する。左脳がエネルギーを使って論理的に考え始める。
ビジネスパーソンもシニアになってくると、それまでの知識や経験でなんとか判断できてしまうものだ。直観で判断することも多い。歳を重ねていく中でも常に新しい発想を可能にしていくには、すぐに立ち上がってくる直観を止めて、面倒がらずに左脳で論理的思考を起動させていく習慣が大切になってくると考える。
そしてその根底部分として重要になるのが、いつの時代にあっても「知識」であるという点だ。人間の素晴らしいところは本人の直接経験だけでなく、他人が経験した間接経験からも知識を習得できるということだ。野生動物はその個体自身が直接体験したことからしか学べない。
しかし人間の場合は自分が体験していなくても他人が体験し習得した知識を見たり聞いたり読んだりして理解することで、あたかも自分自身が体験したことのように知識や経験値を高めることができる。
新たに学習することで知識を増やし深めていくことが、いつまでも新しい発想や柔軟思考ができるポイントになるのだと思う。