普段、わたしたちが「マーケティング」と聞くと、取扱い商品に関する販売促進策やSNS広告、営業方法などを思い浮かべるものです。この場合、「どうやって自社の商品やサービスをターゲット顧客に認知させていくか?そして販売につなげるか?」という視点だと思います。
つい、わたしたちは自分たちの側、売る側の立場や視点で考えてしまいます。そして売上目標や収益目標が先に来てしまうものです。しかし、そもそもお客さまが主役なのです。
本来マーケティングというのは「お客さまが満足してくれるのは、どんな商品やサービスなのだろうか?」。そして、次にそのような商品やサービスを開発し、お客さまに届けるには?という発想が基本であると思います。その時の創造の起点となるお客さま視点の思いや考え方が「マーケティングマインド」であると考えます。
ピーター・ドラッカーは、マーケティングとは「お客さまが求めているものを見出して提供すること」と言っています。市場分析から始まる一連の商品開発プロセス全体ということです。
したがって宣伝広告やSNS広告等のプロモーションは、新商品や新サービスができた後の下流工程に該当するパートとなります。マーケティングで重要な側面を、コトラーは4P(プロダクツ、プライス、プレイス、プロモーション)と説明しました。近年では加えてパートナーも重要だといわれています。
「マーケティングマインド」とは、「お客さまの立場や視点」で一連のプロセスを考えることであると私は考えています。
この「マーケティングマインド」という意味で、驚いたのが、「AKB48」のビジネスモデルでした。
秋山康さんがプロデュースされていますが、その考え方は徹底してターゲットである男子が、どうやったら喜んでくれるのか、満足してくれるのか、ファンになってくれるのかが根本にあります。
まさにここを突き詰めていった結果、あのようなAKB48的なサプライズを伴うビジネスモデルを考えていくことができたのだと思います。
それまでは有名タレントというのは、あくまで「テレビモニター」の世界の人であり、直接目にしたり、握手をすることなどはできない「神」的な存在にあったと思います。
それを秋山康さんは、秋葉原に行けば、いつでも彼女たちが歌ったり踊ったりしているのを目の当たりにすることができ、公演終了時には彼女たちが全員で並んで見送りをしてくれます。さらにCDを購入すると握手券が入っていて、自分のお気に入りの女の子と握手ができるという男子ファンにとっては、これ以上のサプライズ、顧客満足度はないのではないかと思います。究極の顧客視点であり、当時わたしは「ここまでやるのか」と驚きました。
タレントグループによる芸能界への新規参入時の「差別化」というポイントでは、それまで著名タレントというのはテレビで見る人、たった一人の神的存在であったのを、いつでも間近に見に行けるし、大人数グループでで全員が成長途中という「真逆のポジショニング」をとることで実現しています。
この仕組み自体も秋山康さんが、どうやったらお客さまを満足させることができるのか、サプライズを感じるのかという「マーケティングマインド」の視点で、男子の立場に立って徹底して考えた末のことであったろうと思います。
結果、大きな反響とビジネス的大成功を成し遂げました。当時は新鮮なビジネスモデルでありマーケティング手法として機能しました。
近年は商品やサービスの告知手法も細分化し現在はSNSマーケティングばやりです。しかし、これはあくまで商品やサービスをお客さまに認知してもらうための手段でしかありません。
マーケティングプロセスにおける下流工程に、ITを駆使した手法が次々に開発されていることで注目されていると思います。それはあたかも商品やサービスが仮にいまひとつであったとしても、ここさえやれば売れるといわんばかりであるようにも聞こえてきます。近年にあっては、なにか商品を売る考え方が簡単シンプルに流れているような気がします。
AKB48の事例のように、お客さまに自ら見つけてもらって自ら足を運んでもらえるような商品やサービスを、いかに見出し創造し提供していくかが「肝」であると考えます。
枝葉末節ではなくて「幹」の部分の開発に全力を注ぐことが最も重要であると思います。
肝心の「幹」の部分を突き詰め熟考し深堀りしないまま、商品やサービスを立ち上げ、ネットやSNS集客に奔走しても、そもそもお客さまの望んでいた商品、欲しかったサービスそのものでない限り、お金を投入しても集客にならないと思います。単純にターゲット層のスマートフォンに表示されればそれでよいというものではありません。
今日のように類似商品が数えきれないほどある中では、もう一度「マーケティングマインド」の基本に返って新商品や新サービスを開発していくことが肝要であると思います。