前回の、その1の続きです。
先日、「LISTEN」(ケイト・マーフィー著 日経BP)を読んでいる中で、私たち経営コンサルタントの「聞き方」に大変共通するものが数多く述べられていること発見しました。改めて「聞くこと」の大切さを認識し直すと共に強く共感しました。例えば、
「相手が自分でもわかっていないことを引き出すのが聞き上手」
これができれば理想的だと思います。著者はそもそも「聞くこと」の核心は、「この話の中で何が重要か」ということを探り当てることだといいます。
聞いている時に、「この人はなぜこの話を私に聞かせているのだろうか?」ということに留意すべきだと著者は述べています。
つまり、話し手も必ずしも自分で答えを分かって話しているわけではないということです。これは企業現場では良く出会うことです。その答えがわかっていればエグゼクティブコーチもコンサルタントも必要ありません。
私たちは普段の会話においても、人に話すことで自分の考えを整理することができたり、新たな気づきを得たりすることがよくあるものです。
そのために、いわゆる「壁打ち相手」を必要とするのです。よく沈思黙考といいますが、1人で何時間も何日も考えていても堂々巡りの輪から抜け出せないものだと思います。
それは企業経営者であっても同じです。そういう時には経営者自身と同等レベルの識見と知見を持つ者との「壁打ち」が必要なのです。その「壁打ち相手」は社外の人間のほうがベターな場合が多いと思います。社内の人間では経営者に忖度してしまうからです。
その意味でコンサルタントに「壁打ち相手」を求める場合がしばしばあります。コンサルタントとやり取りしている中で経営者自身が自分の考えを反芻し、ジワリと自ら決断の準備をしていくという場面を私も何度も経験しています。
このような真剣な経営者の決断時に際して、「壁打ち相手」になれるということ自体が、そもそもコンサルタントとしての充足感を強く感じる時でもあります。
「話し手が、なぜそれをあなたに言ったのかを汲んで共感することが大切」
話し手がどんなふうにあなたに話したか、ボディランゲージや声のトーンで感じ取ることができれば理想的です。有名なメラビアンの法則というものがありますね。人は視覚情報や聴覚情報などの言語情報に頼らない「非言語コミュニケーション(ノンバーバルコミュニケーション)」から言語自体よりも多くの情報を得ているというものです。
・視覚情報:見た目、しぐさ、表情 :55%
・聴覚情報:声のトーンや大きさ :38%
・言語情報:言葉の意味、会話の内容:7%
言語情報以外で93%の情報を聞き手は得ているということです。話し手の「真意」は、ノンバーバルとして本人にも無意識に自然に現れてきてしまうということだと思います。話し手にまわったときには十分気をつけたいものです。
人質交渉のポイントは「犯人に共感すること」
驚きました。人質交渉であってもアメリカでは共感していくのかと思いました。
アメリカならではの言葉だと感じました。事件の犯人でさえも、誰かに共感してもらいたいと思っているということです。自分の意見を聞いてくれて受け入れてほしい、理解してほしいということは人間の根源的な欲求なのですね。わたしたちも普段から周囲の人の話を最後まで聞いて共感してあげることが大切ですね。再認識することができました。
「優れた聞き手は相容れない考えに耐えられる」
アップルのスティーブ・ジョブズ氏は、アップル社員が次々に提案していうるアイデアを残酷に見えるくらい却下していたといいます。
しかし、それに負けずにジョブズ氏のアイデアを、逆に強く抵抗してくるような人間を採用していたそうです。
さらに驚いてしまうのは、ジョブズ氏にもっともよく抵抗していたアップル社員には、毎年「賞」が贈られていたそうです。すごいですね。やることが際立っていると思いました。
他方で、にアップル製品の開発指揮をとった元最高デザイン責任者のジョニー・アイブ氏は、ジョブズ氏とはまったく対照的マネージャーだったといいます。ジョニー・アイブ氏は自分のもっとも重要な役割は「無口な人たちの声が聞かれるようにすることだ」と述べていたそうです。
この対照的な聞き方をする二人が同時に存在していたということ自体が、本当に素晴らしいことだったと思います。
人の意見や話を最後まで聞くということは、その話し手の意見や考えに同意するということではありません。お互いにベストな「解」を探るためには、まず相手の考えを聞いて理解することがまず必要であるということです。
そして、そこから学べることがあるかもしれないという可能性を受け入れることだと著者のケイト・マーフィーは述べています。
誰のどんな意見に対しても、まずは「耳を傾ける」ということは大切ですね。改めて感じることができました。
※引用書籍:「LISTEN」(ケイト・マーフィー著 日経BP)