通常、ビジネスパーソンが持つ名刺は会社から支給されています。したがってコンサルタントが持つ名刺とは基本的なコンセプトや構成要素が異なっているものです。
特に独立系コンサルタントが持つべき名刺は、最新の「価値工学」の考え方を取り入れて作成していきます。
ご存知の方も多いかと思いますが、「価値工学」というのは、公益社団法人日本バリュー・エンジニアリング協会が、その導入を促進しているもので日本では製造業で広く利用されている考え方です。
「VE」とも呼ばれて一般的な定義としては、「組織が製品やサービスなどを提供する際に、対象の価値が最も高くなるようにお客様からの要求や期待を機能で捉え、その機能を最小の総費用で達成する手段を考える体系的で組織的な活動」をいいます。
この場合、まず提供しようとしている商品やサービスが、「そもそも誰のためのものなのか?」、「何のためのものなのか?」を明確にして、商品やサービスの「価値」を、その「組織」と「コスト」の関係で表し価値を向上させることを目的とした手法です。
世の中の商品を価値工学的にみると、2つの価値から成り立っていることがわかります。1つは「機能的価値」であり、もう一つは「感情的価値」です。
どんな商品でも新開発されて市場に投入された直後は「機能的価値」が重要視されます。例えば、自動車で考えてみましょう。
かつて自動車が一般大衆向けの自家用車として発売され、世の中に普及し始めた頃は、基本的な機能である「走る」「曲がる」「止まる」が最も重要視されていました。したがって、その重要な機能に基づいて自動車は開発され製造されていました。
一方、自動車が「一家に数台」も珍しくないほど普及した今日では、それらの「走る」「曲がる」「止まる」という機能は当たり前のこととして、すべての自動車メーカーのすべての車種に備わっています。つまり、自動車は商品的には完成度が高く、すでにガソリンエンジン車においては成熟期に入って久しい商品になっているのです。
では、次にユーザーが注目する要素としては何でしょうか? ここが各自動車メーカーの勝負を決する要素でもあるのです。
それは「感情的価値」が重要視されてくるということです。
自動車の「感情的価値」とは何かといえば、それは「デザイン」であったり、「カラーリング」であったり、「仕様装備品」であったりします。
これらの要素は自動車本来の基本的機能ではありません。副次的な要素です。しかしながら、自動車市場が成熟化してくると、お客様が購入時に重要視する点は、機能的価値から感情的価値のほうにシフトしてくるのです。
同様のことは、家電やモバイルPCやAV機器などの商品にもいえます。
例えば、スマートフォンをみると、アップル製品も国産メーカー製品も機能的には互角だと思います。機能としては、ほぼ大差がないということができると思います。
でもアップル製品が人気であることは、アップル製品を所有することの感情的価値を重視して開発し製品化しているからといえます。その感情的価値の部分がお客さまに響いているということです。
名刺も同様なのです。「会社の名刺」というのは機能的価値を重視している名刺です。社名、部署名、役職名、名前、電話番号が判明していれば仕事は十分できるからです。
それに対して独立系のコンサルタントが持つべき名刺は、感情的価値を重視した相手に響き刺さっていく名刺が必要なのです。
なぜなら独立系コンサルタントには、会社という看板がないからです。自分の独力で勝負していかなくてはなりません。そのためには、初対面の方と名刺を交換した際に、一瞬にして相手の心に深く刺さっていく名刺でなくては、そもそも営業ツールにはならないからです。
独立系コンサルタントとしての名刺のポイントは次の3要素です。
1.瞬時に相手に印象づけるオンリーワンのキャッチコピーがあること
2.キャッチコピーと連動したオンリーワンの肩書があること
3.印象に残りやすい上半身のカラー写真があること
つまり、名刺をいわば「びっくり箱」にしてしまうことで、初対面であっても相手に深く印象づけをすることができる要素と構成にするということです。そうなれば「名刺」がひとりでに「営業」をしてくれるからです。
独立系コンサルタントの方は、この際、ご自分の名刺を改めて見直してみられてはいかがでしょう。決してムダになることはないと思います。