人はどういう時に「行動」するの?(人の行動原理とは何か)

    これから将来、日本企業は大きな外部環境変化を乗り越えていかなくてはなりません。AI人工知能進展による雇用への影響、高齢化率40%にも迫る超高齢化社会への適応、商品製品の供給過剰社会への対応等が想定されています。企業として組織として、すべての従業員が持てる能力をフルに生かしていくことが強く求められます。これは経営層にとっては喫緊の課題だと思います。

 

 そんな社会環境を迎えていくにあたって、今一度、人の「行動原理」について考えてみませんか。人は、一体どのような時に積極的に行動するのでしょうか? 期待される同じ行動を何度も繰り返すのでしょうか?

 

企業組織は従業員一人ひとりから成り立っており、同様に企業業績も一人ひとりのパフォーマンスの積み上げの結果です。ですから、経営層や管理職層は、従業員一人ひとりの業績向上につながるような行動を彼らに頻繁に起こさせていかなくてはなりません。

 

 では、一人ひとりに業績向上につながるような期待する行動を継続して行ってもらうには、どうしたらいいのでしょうか? 心理学に「ABCモデル」という人の「行動の原理原則」に関する法則があります。ちなみにABCは、Antecedents(誘発要因)、Behavior(行動)、Consequences(行動結果)です。

 

私たちが何らかの行動を起こす時、必ずその行動のキッカケになるもの(誘発要因)があります。その誘発要因をキッカケとして、私たちは何らかの行動を起こします。そして、その行動を行った結果、私たちは「何かを感じる」ことが起こります。この時に「何か感じる」ことが行動結果となります。

私たちの行動というのは、すべてこの「誘発要因」が最初にあり、次に実際の「行動」が起こり、そして「行動結果」があるというサイクルを繰り返しています。

 

 例えば、家族で朝から行楽地へドライブに出かけたとします。ちょうどお昼くらいになって、「お腹が空いてきたので、そろそろどこかでお昼を食べようか」(誘発要因)と思っている時に、前方にラーメン屋さんの看板が見えてきたとします。「今まで入ったことのないラーメン屋さんだけど、時間もちょうどいいし入ってみよう」とお店に入り、ラーメンを注文し食べました(行動)。そして大事なのは、食べ終わった時に「どう感じたのか?」というのが「行動結果」です。

 

その時に「美味しかった」と思ったのか、「まずかったな」と思ったのかがキーポイントなのです。つまり、重要なのは「行動結果」なのです。なぜなら、「美味しかった」と感じれば、また来ようと思います。帰りもそのラーメン屋に入るかもしれません。同じ行動を繰り返すことになります。でも「まずかったな」と思ったら、二度とそのお店には来ないでしょう。

 

 私たちの行動を左右するのは、実際にその行動を行った結果、「どう感じたのか?」ということなのです。私たちが「同じ行動」を繰り返すか否かというのは、行動結果に左右されるということです。

 

職場でもまったく同様です。従業員一人ひとりに期待される行動を、何度も呼び起こせるかどうかというカギは、その行動をした結果、本人がどう感じたかという「行動結果」が重要だということです。

 

そして人は、自分が取った行動を周囲から「肯定」されると、「あ、ほめられた」、「これでいいのか」「感謝されて気持ちいい」と感じることによって、その行動が求められていたことが本人に認識でき、その「同じ行動」をまた繰り返すようになるのです。

 

 ですから、このABCモデルを理解し応用することで職場における従業員一人ひとりに「期待する行動」を、何度も起こさせることが可能になるということです。Aさんにもっとポジティブになってほしい、Bさんにもっと動いてほしい、職場をもっと活性化させたい、という時にABCモデルの原理原則を活用することによって、Aさんにポジティブになってもらえるし、Bさんが動いてくれるようになるのです。

 

 ところが、職場における現状を見てみると、よくあるのが、「誘発要因」に着目し、「誘発要因」を従業員にとって魅力的なものにしてやる気を出してもらおうという方法です。つまり、目の前のニンジンを見せるという方法です。

 

例えば、ノルマ達成したら表彰状を貰えるとか、報奨金が出るとかというようなニンジン(誘発要因)です。とかく企業では誘発要因が魅力的ならば、人は動くだろうと考えてしまいます。確かに、短期的には行動のキッカケになりますが、永くは続かない傾向があります。すぐに元に戻ってしまうのです。

 

では、永く継続するような行動を起こさせるにはどうすればいいのでしょうか? それは人の行動に最も大きな影響を及ぼす「行動結果」に着目することです。「行動結果」を「肯定」することです。

 

すなわち、「ある従業員が期待している行動を取った時に、その従業員に対して何を行うか」なのです。何を行えば良いのかというと、その行動を「肯定」することです。ある従業員に求めている行動が起きた時に、即、その行動を「肯定」するような言動を行うのです。「OK!」と言ってあげることです。これを経営層や管理職層の方々は十分に認識しておくことが大切だと思います。

 

 例えば、部下が会議でプレゼンをして席に戻ってきた時に、即、「良かったぞ!皆うなずいていたぞ」とか、部下が会議資料を一生懸命に作ってくれたなら、会議の後で「今日の会議資料、良く分析されていてすごく分かりやすかったよ」というようにポジティブフィードバックで肯定すれば良いのです。

 

部下は、上司から自分の行動に対して「肯定」された、OKを出されたことで「良かった! よし、もっと頑張ろう!」と思うからです。この一言の肯定言葉が重要なのです。

 

つまり、ある行動を行った従業員からすれば、自分が取った行動が、上司から「そう、それでいいんだよ」とか、「OK!そうしてほしかったんだ!」「すごくいいね!」と、取った行動を認めてもらうことで本人は「あ、これでいいんだな」と確認することができるのです。会社から期待されている行動がはっきりと自覚できるのです。

 

上司からほめられたり、認められたりすることで、「いい気分だな、またやろう」とモチベーションが高まるのです。一人ひとりのやる気のアップ、やりがい感のアップが、やがて個々人の集合体である職場や組織に広がり、それが職場の活性化につながっていくのです。

いかがでしょう。あなたの部下に、あなたが「期待した通り」の行動が起きた時に、思いっきり「OKサイン」を出してあげませんか。

 

 

これまでの著書一覧

現在までに書籍化された著書をご紹介させて頂きます。


普通のサラリーマンでもできる!「週末コンサル」の教科書

「週末コンサル」とは、サラリーマンが平日の夜や休日を使い、自分の経験や知識を活かしてコンサルティングをすることです。元手ゼロで始められ、「会社以外にも収入源をもち、ゆくゆくは独立もしたい。でもリスクをとるのはいや」というサラリーマンに最適。 本書では自分の「強み」の見つけ方から、サービス・メニューの開発法、「刺さる営業ツール」の作り方、成約率が高まるプライスリストの作り方、顧客獲得法まで徹底解説しています。

出版社:PHP研究所

価格:¥1400

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本書では自分の「強み」の見つけ方から、サービス・メニューの開発法、「刺さる営業ツール」の作り方、成約率が高まるプライスリストの作り方、顧客獲得法まで徹底解説しています。



最強チームを作るリーダーの条件

出版社:ごきげんビジネス出版

価格:¥500 電子書籍

近年、「個」を基本とした成果主義は日本企業にすっかり定着した感がある。そんな中で成果主義を基本としながらも、チーム単位でメンバー一人ひとりのコミュニケーションを図り、チームとしての目標を達成し続けている職場が頭角を現してきている。


ふりかえってみると、我々日本人は仲間と協力しながら高い目標をクリアしていくやり方が得意であった。
今日、今こそ「チーム」として個々人が協力し合い、チーム目標を追いかけるやり方こそが、「個人」と「チーム」がともに生き生きと輝き、自走していく職場づくりの肝なのである。



うなづき力〜部下をやる気にさせるオヤジ管理職マニュアル33

出版社: ナナ・コーポレート・コミュニケーション

価格:¥ 1,365 

この本はズバリ、私のコンサルティング成果をご紹介してる著書です。

私が日産自動車(株)にいた時に、ある関東郊外の系列自動車ディーラー店舗様の業績アップ、経営改善を担当しコンサルティング&コーチングを行いました。

 

この店舗様は、それまで全社で業績40位と万年低迷店舗でした。私は「店舗まるごとコーチング作戦」というコンサルティング方法を開始しました。その後、8ヶ月後にベスト8位に浮上し、9ヶ月後にベスト5位、そして10ヶ月後にベスト3店舗にまで浮上しました。「うなずき力」は、このプロセスとノウハウをまとめたものです。 

 

小売店のコンサルティングをされておられるコンサルタントの方々に高い評価を頂いている書籍です。



若い人がワクワク、キビキビ動き出す!上司のためのコミュニケーション技術

出版社:ごきげんビジネス出版

価格:¥300 電子書籍

いよいよ「ゆとり教育」を受けてきた世代が企業の職場に増えてきました。豊かな時代に育ってきた「ゆとり世代」社員は、上司世代とは価値観やものの考え方の温度差が大きいというのも事実です。

 

今後、ゆとり世代社員は、ますます職場に増えてきます。彼らを戦力にしなければなりません。「それはわかっているけれど、うちのゆとり世代社員はいくら言っても動かない・・」という上司の悩みにお答え致します。若い部下と上手に付き合いたいと思っている方、若い人の育て方を学びたい方、新人教育を担当している方、ゆとり世代社員との間に考え方や価値観にギャップを感じている方へ。

 

コンサルタントの方々からは、クライアント企業で現場マネージャーやスタッフを動かしていくうえで非常に参考になったと好評を頂いています。



ビジネスで成功する人が身につけている気くばりの極意

出版社:ごきげんビジネス出版

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今日のビジネスシーンでは、あらゆる場面でCS(お客様満足度)が重要視されています。それゆえ消費者は、誰もが常に心地よい状態を求めるようになっています。人と人との間におけるCSとは「気くばり」を意味します。

 

CSレベルもある程度以上でないと認識されないのと同じように、「気くばり」もあるレベル以上が必要なのです。ここに重要な意味が隠れています。それは「気くばり力」を、もう1段階レベルアップさせることで一気に皆の注目が集まるということです。 これまで約200店舗における現場での指導やアドバイスを行ってきた中で、「できる人」に共通していることに気が付きました。それは皆「気くばり」が素晴らしく上手な人だということです。「気くばり力」こそ成功を呼び込む鍵なのです。

 

コンサルタントの方々からは、クライアント企業の現場で一瞬で現場マネージャーやスタッフと関係構築を図る上で非常に参考になったと好評を頂いています。



定年前後の人のための「講師デビュー」入門

出版社: 同文館出版

価格:¥ 1,470

この本は、私がクライアント企業にコンサルティングで伺っている際に、現場のマネージャーや店長の方々とお話をしている時に思いついた本です。店長やマネージャーの方々が現役時代の知識や経験をフル活用すれば講師になって活躍すこともできると思ったからです。 

 

特に 定年を迎えてからデビューしセミナー講師として活躍するためのノウハウをまとめました。自分の「いちばん得意なこと」を話して生きがいと収入を手に入れようという考え方です。講師になれば、これまでのビジネスマン人生で長年に渡って培ってきた「知識」「技能」を他人に伝えることができます。人に伝える、という行為からは大きな充足感が得られます。また自分の存在感を認識することもできます。それが「生きがい」にもつながっていくと思うのです。私自身の経験にもとづいた具体例を交えながら分かりやすく解説しています。

 

コンサルタントの方々からは、非常に参考になる部分(オンリーワンテーマの発見方法、コンサルタントの名刺の作り方、等々)があると好評を頂いています。